日本は世界から科学技術の進んだ国だと認識されています。確かにそれは事実で様々な最先端技術が生み出されたりそれを応用した商品が発売されています。しかし実はITスキルに関しては一つの国として低いレベルにあります。意外に思えるかもしれませんが、欧米と比べるとITに疎い(うとい)のが現実です。

この記事では日本のITリテラシーをめぐる現状について説明し、どんな取り組みがされているかご紹介します。

1.日本のITリテラシーは低いの?

日本のITリテラシーレベルは低い

「メイドインジャパン」は商品の信頼性や革新性を示す一つの指標になっていますが、その同じ日本がITには疎いというのは意外ですよね。しかし「日本はソフトウェア開発などの分野ではアメリカより30年も遅れている」と言われています。実際ソフトウェアのスタンダードは日本ではなく、海外で生まれているのが現状です。

大学教育などにおいても日本ではITの地位はそれほど高くありません。アメリカではコンピュータ・サイエンスが人気学科の一つになっていますが、日本では法学部や医学部、経済学部などが花形です。それらの学部も大事とはいえ、IT関連の学部がいまいち頭打ちな状態になっているのが今の教育現場の現状です。

日本のITリテラシーレベルの低さを示す数字的根拠もあります。リサーチ会社の「ガートナージャパン」によると「日本人は職場でのIT活用が苦手でスキル向上への関心も薄い」という結果が出ていますが、調査ではデジタルテクノロジー関連のスキルにおいて「素人」あるいは「中程度」と自分を評価する日本人は58%でした。

逆に自分「熟練」または「エキスパート」と回答した日本人はわずか42%でしたが、アメリカでは77%もいました。これらの結果をまとめると、日本は先進7カ国のうちで最もIT関連で苦手意識が高いと言えます。さらに苦手意識が高いだけでなく関心の度合いも低いです。ITスキルの習得に関して「関心がない」と回答した人は全体の16%にものぼり、これも先進7か国で最も高い数字でした。スキルも関心もないという現状は、現在のIT社会においては深刻な問題です。

もちろん、すべての日本人がITに苦手意識を持っているわけではありません。若い人は年配の人よりもITやデジタルコンテンツに触れる機会が多いのは確かですし、企業によってはITを先進的に取り入れているところもあります。また、ITとはそもそも「InformationTechnology」の事ですが、テクノロジーに関しては日本は高レベルです。

ですからスポット的には日本でもITないしはITリテラシーレベルは高いところがあります。それでも国全体としてはまだまだ改善する余地は多いです。

日本のITレベルを示すエピソード

日本では現在、ダウンロード速度5Gbpsとか10Gbpsという超高速通信が行える技術が出てきたり、スマホやタブレットなどのモバイル端末が普及したりと一見IT社会に見える部分がありますが、ITに必要なセキュリティやIT用語への見識のなさを示すエピソードはたくさんあります。

たとえばWi-Fiはタダで使えると思い込んでいる人が多かったり、Wi-Fiにパスワードをかけずに近所で通信をシェアしていたり、スマホのキャリア契約を家族内でばらばらにしていたり、すぐにSNSや動画サイトなどで炎上が起きたりする事例が少なくありません。

コンピュータやネットワークの知識だけでなく、モラルやセキュリティ対策をある程度意識することもITリテラシーに含まれますが、ネット関連のトラブルの多さを考えると、国全体がITリテラシー向上に取り組む必要があると言えるでしょう。

2.ITリテラシーを高めるための日本の取り組み

日本は現在、ITリテラシーを国中で高めるための方策を色々と掲げています。例えば以下のような取り組みがなされています。

・e-ネットキャラバンの推進
現在、スマホにおける不当請求や違法ダウンロード支援アプリなどのトラブルがいろいろと報告されていますが、子どもたちはITリテラシーに関して、まだまだ無知な部分が多くあります。そのため総務省は文部科学省と通信関係団体等と連携して、子どもたちがネットを安心・安全に利用できるように「e-ネットキャラバン22」という保護者、教職員及び、児童生徒向けの講座を展開しています。

平成28年度には全国1,755箇所で開催されましたが、フィルタリング(有害サイトへのアクセスを未然に防ぐセキュリティ対策)の内容および設定を中心とした教材を使った、保護者や教職員の理解の向上を図っています。

・高齢者のITリテラシーレベルアップの取り組みをしている団体への授章
インターネットを利用するシニア世代は着実に広がっていて、60代では7割以上、70代でも5割以上の人がネットを利用しています(平成28年:総務省の通信利用動向調査)。インターネットを使って医療や健康に関する情報を調べる人も少なからずいるため、正しい情報を取捨選択するスキルが今後いっそう求められています。

そこで内閣府はシニア世代に向けたパソコン教室を実施している団体などを、高齢期のIT活用の推進例として取り上げ授章する取り組みを始めています。高齢者のITスキルをアップすることでより国全体のITレベル底上げを目指すこともできます。

・学校におけるプログラミング教育の必修化
小学生のころに簡易的なパソコンでゲームをしたり、簡単なプログラミングをしたことがあるという人も少なくないと思いますが、国は2020年4月から小学校におけるプログラミング教育を必修化するという施策を講じました。必修化プログラムでは以下のような点が意識されています。

・情報活用能力(情報モラルも含める)
・プログラミング的思考の育成

なおプログラミング教育の必修化は中学校では2021年から、高等学校では2022年から行われることになっています。2030年にはIT人材が79万人も不足すると言われているため、国はこのようなプログラミング教育によってIT人材の創出に向けて取り組んでいます。

3 .まとめ

現在の日本におけるITリテラシーレベルは決して高いとは言えません。単純に国民のデジタルテクノロジーに対する苦手意識があるだけでなく、関心をなかなか持ってもらえないというのも深刻な状況です。国は現在、ITリテラシーを高めるための様々な取り組みをしていますが、会社としてはそれに加えて会社独自のプランを持つ必要があるでしょう。

ITリテラシーは単に、ワードやエクセルなどのオフィスソフトをある程度使えるだけのスキルを意味するのではなく、情報をより効率的に活用したり、ネットでの情報の取り扱いを安全に行うセキュリティスキルも意味します。会社が出来るだけ早く体系的なITリテラシー教育を行うなら、会社の生産性をより高められるでしょう。